2009/03/18
アジアに回帰したベトナム - AJCEPを生かす -
08年度は目標である95億ドルに到達できなかったものの、91億ドルの伸張を記録した。米国・欧州・日本向けともに2ケタの伸びを示したが、15年には180億ドルを計画しており、日本向けだけを見ると、実に3倍の25億ドルの輸出を見込んでいる。
ベトナム縫製産業協会によると、現在アパレル産業は200万人の就業人口を擁し、企業数だけでも2000社以上に上る。このうち、輸出を手がけている約150社で、輸出金額では原油に次ぐ国内シェア第二位である。09年度より、原油に代わって首位に躍り出る可能性が高いとされており、政府の戦略が実を結びはじめているといえる。
政府はアパレル輸出拡大を最重要項目として位置づけているが、課題となっていたのが原材料の供給能力であった。確かに前年に比べ17ポイントを上回る伸びを見せたが、比例して53億ドルの原資輸入も発生しているのである。すでにAJCEP(日ASEAN包括的経済連携協定)を発効し、中国+1の先駆的役割を担い始めてはいるが、抜本的な原資調達は暗礁に乗り上げたままである。
ベトナムのアパレル輸出は、56%が米国と一国傾注の様相でもある。ただ、米国の景況悪化による影響で今後大幅な伸びを見込み難くなった今、岐路に立たされているのも事実である。
有力工場では「米国向けの比率を見直し、日本向けのラインを構築していく」(ハノシメックス)など、
我々日本重視の姿勢が顕著に現れ始めている。
2009/03/09
水際の攻防 2/2 -適応機制から見るアパレル物流-
前述の一文である。
アパレルの商流とは因果なものであり、SPAの根幹には常にリスクが付き纏い、さもギャンブルかのように極めてハイリスクハイリターンに晒される。
これにはコマーシャライズという言葉が不変の神話・強迫観念を与えている。
例え、商品原価の100倍でも1000倍でもかけて店頭に品を並べ意思表示するという単純且つ明確な答えである。一時のブランディングの一つでもあった。
消費者を裏切る行為は淘汰されるという現代(正確には2008年度まで)の哲学でもあった。
適応機制とは商流とは無関係であり、人の欲求対応そのものであるが、哲学が存在する以上、
この理論は成立するのではないだろうか?
ここで言う「欲」の定義だが、
一重に「当該商品」が「XDAY」へと到達できること。である。
主に媒体を打ち集客を望む戦略商品を指すことが多い。
登場者は、商社、アパレルメーカー、海外工場、国内物流インフラ、国内人員インフラ
の五つである。
実は前出の5大要素がこの5者に直結している。(含有しているケースもあるが)
①商社:代償機制
②アパレルメーカー:攻撃機制
③海外工場:逃避機制
④国内物流インフラ:合理的機制
⑤国内人員:防衛機制
であることが多い。
わかりやすいのが、海外工場である。
商社との貿易において、B/Lで換金できる条件に満たす商材を保障できないケースが多々発生しているからである。通常ではあり得ない納期(リードタイム)を求められるが、見合うものではない。
日本品質のローコストオペレーションにはバランスがある。クオリティ+リードタイム+コスト
であるが、急かされてる際に、犠牲になるのは、コストではなくクオリティである。
数量面でも商品面でもクオリティを低下させることで、リードタイムを勝ち取る構図である。
これは商社による抑圧でしかなく、負担以外の何者でもない。海外工場自身が望むべくもないのである。
従って2つの意味を持つ逃避機制へと回帰する。
1)抑制・退行による工場体力の減下
> 生産バランスを維持しなくなる。手を抜く。
2)クオリティ維持は商社次第になる。
> 工場のアイデンティティが商社任せになる。自己が持つQCなどの修復能力が欠落する。
まさに反動形成が悪循環となっているのである。
次に、トリガーであるアパレルメーカー。
欲そのものでありながら、機制への対象となりえるのは、欠落事項が精査できずに事を迎える事が頻発しているからに他ならない。
例えば、ある商社へOEMしたニットが納品遅れのなったケースである。
担当者へつめよるメーカー。工場が稼動限界を超えている実情を話す商社。
納期前倒しを告げられた際に遅れることを伝達してくれというメーカー。
商社は譲歩折衷案を出し、納期短縮対応に努める。
しかしながら、肝心の依頼変更事項や工場キャパ、ブランディングにおける折衷案が欠落していることが多い。この際、物流選定に国内インフラが関わっていないこともポイントである。納期設定において風下がリードタイム内に入ることは稀である。たかが1日されど1日と言われる所以である。
従って、攻撃機制が当てはまる。
1)目的意識の植え替え
>当該事象において原因分析・対策を打っている時間がなく、プライオリティが変化していることを周知させ、まずは達成するためにはいかなる手段も講ずる姿勢になる。
2)転嫁・行動によって動員力を増す。
>シビリアンコントロールにも似た動員理由を明確に掲げ、物事の転嫁により、排他的になる。
実際、怒鳴ったり恫喝したりなどという陳腐な手法も存在するが、目的意識が統一されているところは興味深い。攻撃的と見られる節に起因している要素でもあり、アパレルの原動力とも言えなくもないが。
さて、国内物流インフラ・人員インフラ・商社である。
商社系であれば、この3セクションが同時に且つ直接影響しているケースが目立つ。
さらには、生々しさが一層増しているのも事実である。これは、エンドユーザに近づくほどに、納期猶予がなくなり、ルーティンビジネスではなくなっていることに起因している。
そして、国内物流では無慈悲とも思えるリアリスト(現実主義者)が殿に構えていることが多いのも特徴である。これを合理的機制と定義する。
国内物流は海外・FWDなどに比べ、手法が少なく、打つ手が限られている。特に庫内作業(タグ付けや検針作業・ホルマリン対応、店舗配分作業など)は作業生産性に限界があり、コストではなく、荷姿や数量、曜日に左右される傾向がある。また、配送業者も専任社が手配されるケースは稀であり、配送スケジュールが遵守されている。※
※80キロ規制や昨年のオイルショック、法改正により、運送業者が自然淘汰され、直流を得意とするシマムラでも波動に即応することは困難であり、佐川急便やクロネコ、百貨店向けのMOVING・浪速運送など、アパレルで実績を持つ業者でも路線スケジュールを守る傾向が強い。
そのなかでも枠に囚われない仕組みで稼動している物流業者も少なからず存在している。彼らは当日入出荷を常としており、分刻みで業務をコーディネートしている。さらに着荷に対してもシビアで、ルートの動きまでもシェアする。トレーサビリティを地で言っているのである。これこそが強い欲求に対し、合理的機制による回避策なのである。
国内物流とは、当たり前のように当たり前でないものをコーディネートしていくもの。つまりは評価は加算方式ではなく減産方式であり、トラブルが起きないことが評価であり、それ以外は全てクレームという環境が常なのである。
しかしながら、この業態には闇の部分も秘めている。先日グッドウィルやフルキャストが新法により、処分を受けたことは周知の事実であるが、SPAビジネスには瞬間波動が常態であり、週に2・3日ひどい場合1日稼動のみというケースも多々見られる。
ワンコールワーカー(日雇い派遣)という概念である。筆者も経験しているが、個人と企業は極めてアンフェアな土俵でもある。だが、実際にはこれら、週2~3日の稼動をニーズとした人員を集中的に集めることで成り立つことが通過倉庫、しいてはSPA業態倉庫の実態でもある。
季節要因が強いこの業界では、社員や季節アルバイトだけでは網羅できない細密なオペレーションを動員数を持って払拭する人海戦略をベターとする企業が、同一ニーズを持つ派遣会社や派遣人材を渇望し、取り合っている。実際にこのニーズの内では人材は売り手市場である。
とはいうものの、仕事はハードな面が多く、回転率が早いのも事実である。そして、ここに防衛機制が存在する。
1)同一化:有名ブランドの出荷オペレーションを稼動していると謳う。制服や待遇に格差をつけ人員を 定着化する。
2)投射:波動が強く、継続的な雇用が見込めない際に、業態を盾に人員をカットする。
強い欲求により派生する適応機制は各社の思惑や損益を超越し、偏ったニーズを維持したまま今も尚拡大している。しかし、2年前までに通用した、瞬間作用型のビジネスモデルは陳腐化している。
懸念しているのは、
各社がSPA業態に追従する為に、海外では二匹目のどじょう探しに精を出し、国内では吸収力をもった1強多弱に丸投げになってはいないか?
ということである。
2009/03/04
水際の攻防 1/2 -適応機制から見るアパレル物流-
筆者出張中の為、十分な資料をご提供できないことをここにお詫び申し上げる。
欲(よく)は、動物・ヒトが、それを満たすために何らかの行動・手段を取りたいと思わせ、それが満たされたときには快を感じる感覚のことである。欲望・欲求等ともいう。生理的(本能的)なレベルのものから、社会的・愛他的な高次なものまで含まれる。心の働きや行動を決定する際に重要な役割をもつと考えられている。 wikipedia より抜粋
この感覚が水際のアパレル物流とどう関係していくのだろうか?
適応機制という言葉がある。欲(欲求)が発生した際に、解消、解決に向かう現象の一つで、
大きく5つの括りで表現される。合理的機制・防衛機制・代償機制・逃避機制・攻撃機制である。
SPAの最後の砦とも言われるエンドユーザ向けDC/TCには、この要素が盛り込まれ、日々適応規制が起こり、新たなビジネスが生まれ続けている。一過性であることが多く、派遣問題にも直結しているグレーシナジーなのである。
FR社が公言したファーストアパレルは今や時代の代名詞であるが、これが指し示す新の意味は、誰にも真似のできないリードタイム(生産工程)+QR(売れる商品が売れる店にある)+クオリティ(価格満足比)にある。つまり、ファーストアパレルはFirst Aparrelではなくファーストフードと同じFast Aparrelなのである。入用なときに必要なものを価格に見合った見栄え・性能で使い切る為に存在する高回転のアパレル商材群がこれにあたる。ファーストフードと同義である。
競合他社に限らずとも、この仕組みをヒントにQRの一大WAVEが起きた。しかしながら、工場生産も含め常に高回転型のアパレル物流を継続・維持することは極めて困難なことである。
バリエーションの豊富(小ロット多品種)によるヒューマンエラー(発注漏れ・進捗管理漏れ)もさることながら、QRは市場次第だからである。来月売れると目論んだ戦略が市場では来月まで待ってくれる保障はどこにもないのである。このギャップが機会損失につながり、在庫過多を誘発し、ブランディング戦略を濁らすとアパレルメーカーの多くは考えている。OEMビジネスでは商社が工場生産を急ぎ、FWDはbookingを最適化し、場合によってはHDSを駆使してドレージまで漕ぎ着ける。
つまり、この商流にかかわる全ての業者が何が何でも販売店店着X-DAYに間に合わせるため、尽力するのが水際の攻防なのである。
【次回は、各社の思惑と適応機制の相関関係から、アップする予定です。】
2009/03/03
ゲーム理論から見る中国+1
完成とする法則は存在しない為数学的に難解であるとされているが、要約すると極めてシンプルである。
「複数の行為主体者(物でも可)が各々の目的の為に最適化を図るとどうなるかを研究する」ことに尽きる。筆者が熟知できる低俗な理論ではない為、ここでは狭義の一意、貿易にスポットをあて考察する。
先日、中国商務部が「いかなる貿易保護主義に反対する」との立場を表明した。繊維業界でも中国製品を対象とした制限措置に反対する声が高まっている。
「遅れてきている国内企業を守ることはできても、世界企業との競争力は守れない」(中国紡繊工業協会)など明確な反対意思を示している業態も多い。
世界経済が破綻の一途を辿っている中、新興国の繊維業界は軒並み輸出減少となっているが、
中国に関して言えば、堅調推移を維持しているのが実情だ。その要因の一つが先進国だけでなく新興国にまで流入している繊維商品の数々だ。コストプッシュに晒され磨かれた世界の工場は、自負するままに、中東・南米など、多方面にチャネルを増殖させている。
これに対し、新興国が中国製品に対し、輸入制限する動きが広まりつつある。
パキスタンは、中国製ポリエステル(長繊維のみ)に制限措置をとり、ブラジルでは革製品に対し、同様の措置を検討している。
一方中国海関総署は1月の貿易総額の発表と共に、状況分析を公表している。これによると、輸出増進を急務として政策を打った輸出増値税の引上げが半期で政策効果を表していると指摘している。
実際相対的に供給ラインが窄まっている状況下でありながら、一部のカテゴリーで前年実績を上回ってはいる。衣類・付属品で5,7%。 靴類が10,6%。 バッグ類が8,3%である。
しかし、商品平均単価が$100を超える対ユーロ圏の激減(-20%)により、高付加価値商品の生産ラインは瓦解している。そして、6%とはいえ対日輸出は確実に減少しているのである。
新興国へ飛び火するのは必然といえるのではないだろうか。
中低級品の生産を増やしていく前時代的な動きが水面下で加速している実態がここにある。
この状況に歯止めをかけようと保護主義を掲げた新興国と中国に「ナッシュ均衡」が当てはまるのではないかと危惧する。双方の戦略にブランディングを意識した最適化されたフィールドは用意されているのだろうか?
おりしもアパレル・商社によるOEMが過渡期を終えた今、対岸の火事と揶揄するアパレルメーカー諸兄に対し警鐘を鳴らしたい。歴史は繰り返してはいないだろうか?重商主義に溺れ、保護政策を誘引したのは、我々日系サイドの人間ではないだろうか?
中国+1へと昇華された商流は今、合成の誤謬(ごうせいのごびゅう)を感じずにはいられない。
2009/03/02
日系商社のサバイバル -香港編-
存在感を示すのが伊藤忠商事。原料のITMは08年度売上高が2億ドル、収益も35%増で4期連続の増収増益の見込み。薄利多売の定番商品が減少すると同時に、中国企業向けの販売が伸びている。グローバルな原料貿易を行う拠点としての香港の位置づけが高まっているといえる。
収益の60%は差別化繊糸などが稼ぐが、綿糸もインドや中国産オーガニックコットンで取り組みを強化中だ。本年度内に累計で1,000tの販売規模を予定するが、現在はプレ・オーガニック段階が主であり、本格化には2~3年のスパンが必要であると考えられている。
一方、製品主のPALは08年度売上高2億8000万ドルで収益も20%増の予定だ。ただ80%が現地や中・インドであり、対日収益は20%に留まっている。ここにきて米国向けのオーダーキャンセルも目立ち、新たな商圏作りが急務である。呼応するかのように、同社はFIFAのアパレル関連商品の企画・生産事業を立ち上げている。2011年までに新たに2億ドルの売上高を狙う。ワールド杯後のブランド確立も目指す目論見だそうだ。
三菱商事傘下トレディアファッションの07年取扱高は8億ドル強。中国68% 香港20% ベトナム12%の構成である。カジュアルSPAや対日OEMに傾注しており90%がそれらをしめる。
トレディア香港に期待される機能として、ベトナムでの生産体制の確立である。取扱いは年々増加傾向にある(05年5,800万→06年7,500万→07年9,300万ドル)が、伸張率ともに、中国に軍配があがる。ただ、リスク分散という意味で第三国としてベトナムをチョイスするあたり、三菱らしい手法でもある。
一方、日商岩井(双日HDG)もベトナムでの基盤整備に余念がない。本社管轄で、現販売先とは別に、香港独自法人を組織している。まだホーチミン中心のみであるため、今後ハノイや北部拠点の拡充が望まれるところである。非繊維のラインナップ拡充の為、帝人ファイバーとの連携も見逃せない。
